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大阪地方裁判所 昭和52年(ワ)6839号 判決 1982年11月29日

原告

上田二朗

原告・右法定代理人親権者母

上田禎子

原告

上田富一

右三名訴訟代理人

花房節男

右同

大橋武弘

被告

越川恵

右訴訟代理人

前川信夫

主文

一  被告は原告らに対し各金一五〇〇万円及び右各金員に対する昭和五一年八月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

一請求原因1(当事者)の事実は、当事者間に争いがない。

二本件診療の経過

1  猛三が昭和五一年八月五日正午前頃原告主張阪南団地一号館二階の田中玲子方ヘビールを配達したこと、その帰途にプラスチック製ビールケースを抱えたまま階段から転落したこと、その頃から猛三の顔面が著しく蒼白となり、全身冷汗多量の症状を呈していたこと、その左下腿部に挫創出血が認められたこと、救急自動車で被告経営の越川病院へ搬送され被告の診療を受けたこと、被告が猛三の左下腿部外傷を縫合したこと、猛三が午後二時三〇分過頃腹部の疼痛を訴えだしたこと、その後、猛三が腹部、胸部、肩部、頭部の身体各所の疹痛を訴えて暴れたこと、そのため右腕の点滴静注の注射針がはずれ、訴外吉村看護婦が布で猛三の腰部、足部をベットに縛りつけたうえ、エラスター針を使用して点滴部位を左足に変更したこと、午後三時一五分乃至二〇分頃、右吉村看護婦らが、猛三の足を押えつける作業を、その家族の者と交替し、退室したこと、午後四時頃、猛三の家族から容態が異常である旨の連絡を受けて被告及び看護婦らが病室に駆けつけたこと、午後四時一一分猛三が死亡したことは当事者間に争いがない。

2  右1の争いのない事実並びに<証拠>を綜合すると、以下の事実が認められ<る。>

(一)  猛三は前記争いのない事実のとおりビールを配達し、約一二本のビールの空瓶を入れたプラスチック製ビールケースを抱えて団地の一六段のコンクリート階段を降りる際に、半ばから転落した。猛三は物音を聞いて駆けつけた団地住人田中玲子、同山本恭子から声を掛けられると大丈夫と返事をし、散らばつたビール瓶の破片を片付けようとした。しかし、右両名に左下腿部の止血措置を施してもらつた頃から猛三の顔面は蒼白になり、冷汗多量の症状を呈した。連絡を受けた原告禎子は、猛三の状態が改善しないので午後零時一六分救急車の出動を要請し、零時二三分の救急車が現場に到着した。猛三は依然冷汗を出していたが、救急隊員に両脇を抱えられて乗車し、原告禎子が添乗して零時二五分公団住宅を出発した。

(二)  猛三は零時二九分被告経営の越川病院に搬送され、被告の診察を受けた。被告は挫創部位にガラス片が混入していないかを検査するため、猛三を一旦レントゲン室に入室させた。しかし猛三が強固にエックス線撮影を拒否したため、そのまま診療室へ運び入れた。被告が問診視診触診をしたところ、顔面蒼白、発汗多量、左下腿部挫創、左指挫創、腹部緊張が認められ、頭部には外傷、疼痛などの異常所見はなかつた。被告は左下腿部の挫創を縫合し、カネンドマイシン(抗生物質)、トキソイド(破傷風予防薬)、バストシリン(抗生物質)、胃薬、セデス(鎮痛薬)を投与した。

被告は、猛三の血圧が八八/六〇と低血圧でショック症状を呈していること、階段からの転落が意識消失に起因すると考えられることを併せ考慮し、脳血管の痙攣による一過性の脳虚血症と診断した。経過観察のため入院が必要と判断し、血圧が上らない点を指摘して入院を勧告した。これに対して猛三は、仕事で多忙であり、少時間安静にしておれば回復するので暫時休ませてほしいと言つて入院を拒絶した。

被告は、原告禎子を診察室に呼び入れ、猛三には糖尿病の既応症があり現在は食餌療法をしている旨を聞いて退室した。吉村看護婦らも猛三に待合室へ行くよう指示して退室した。

猛三は待合室で休養していたが、左肩胛部疼痛を訴えはじめ、左肩胛部のエックス線撮影を受けたうえ、午後二時二〇分同病院に入院した。

(三)  被告は、当初の診察所見と原告禎子から聴取したところに基づき、ショック状態の回復と血管確保とのために点滴静注を決め、糖尿病に悪影響のない栄養剤の使用を看護婦に指示した。長谷川婦長が左肩にゼノール湿布を貼つて治療した。猛三の血圧は八四/?(最低血圧測定不能)、九〇/六〇の値を示した。

(四)  午後二時五〇分被告は猛三を診察し、触診によつて「腹部やや軟ならず」、腹部圧痛のあることを知つたが、生命に係わる重症ではないと判断して退院時までに諸検査を実施するように指示した。

(五)  午後三時〇五分、猛三が突然腰部疼痛を訴えて暴れだした。原告禎子が看護婦詰所に連絡し、長谷川婦長が被告に急報した。被告は診察のうえ状態の改善がみられないので昇圧剤エフェドリン一アンプル、抗ショック剤デキサシエロソン一アンプルを注射した。その時点での血圧は、九〇/六〇、八四/?の値を示していた。

(六)  午後三時二〇分、猛三は肩、腹、腰、頭等身体各所の疼痛を訴えて再び暴れだした。連絡を受けた長谷川婦長は、猛三の腕に施されていた点滴静注が血管外に漏れているのを発見した。猛三を俯伏せにし、被告の指示、立会の下に左下腿部にエラスター針を使用して点滴を再開したうえ、腰部、足部をシーツでベットに縛りつけた。午後三時二五分、被告が鎮静剤ホリゾン一アンプルを注射させた。

(七)  午後四時〇五分、猛三は危篤状態に陥り、血圧測定不能、搏動微弱、搏数六六、チアノーゼの症状を呈した。来診した被告は猛三を診察したが、冷汗、指のチアノーゼ反応が出ており、直ちに酸素吸入を指示し、強心剤テラプチクを注射した。人工呼吸が開始され、強心剤も打たれたが、午後四時一一分猛三の死亡が確認された。

三ショックおよび死因

1  ショックについて

(一)  前記認定事実中ショックに関係するものを摘示すれば次のとおりである。

(イ) 猛三の顔面蒼白、冷汗発生、意識保持の状態は転落直後より外来受診、入院を経て危篤に陥るまで四時間余り継続した。

血圧は外来受診時八八/六〇であり、その後九〇/六〇をこえることがなく、入院した午後二時二〇分頃には上が八四、下は測定不能であり、三時五分頃にも同様の時があつた。

鑑定人溝井泰彦の鑑定結果によれば、これらの症状は出血性ショックの徴候とされる。

(ロ) 猛三の腹部は外来受診時やや緊張があり、二時五〇分には圧痛があって「やや軟ならず」の状態であつた。この事実は腹腔内出血のあつたことを推認させる。被告本人尋問の結果中事後的判断としてのべるところもこれを裏付ける。

なお猛三が午後三時二〇分から腹痛だけでなく、胸部、頭部の疼痛を訴えたことは当事者間に争いがない。その頃腰痛をも訴えたこと前記認定のとおりである。しかし右鑑定結果によれば腹腔内出血の場合にも不安感、高度の興奮を招来して暴れまわることがあり、脳が虚血状態になるなどして頭痛を訴え、かつ精神錯乱状態に陥ることもあると認められるので、猛三が腹部以外の痛みを訴えたことは右推認を左右しない。

(二)  前記認定のとおり猛三は空瓶の入つたケースをかかえてコンクリート階段を降りる途中八段ばかり転落して前記の症状を呈したものであるから、転落した際にケースの角で腹部を打つか又は階段の角で背部を打つた可能性が高いと認められる。

<証拠>によれば猛三は慢性肝炎と脾臓腫大の疾患を有したことが認められるところ、右鑑定結果によれば脾臓に損傷が生じた場合に疼痛が左肩に放散するのが通常であることが認められる。猛三が入院前から左肩胛部痛を訴えたことは前記認定のとおりであり、猛三の左半身に下腿部挫創のほか上腕、指、肩胛部の挫創、擦過傷があつたことは前記認定事実と甲第一号証によつて明かである。他の部位に外傷のあつたことを認めるに足る証拠はない。

他方右鑑定結果によれば肝臓損傷の場合は疼痛が左肩に放散することがないことが認められ、このことと猛三の外傷が左半身に集中していることに照らすと、肝臓に損傷を生じたとは断定できない。

猛三のその他の内臓に損傷を生じたと推認するに足る証拠はないので、その腹腔内出血は打撲に伴う脾臓損傷によるものと推認される。

(三)  右(一)(二)の事実と右鑑定の結果に照せば、猛三の呈したショック症状は打撲に伴う脾臓損傷に起因する出血性のものと推認される。

他の原因によるショックであつたことを認めるに足る証拠はない。

2  死因

(一)  (頭部内出血による死亡の可能性について)

猛三が午後三時二〇分頭部疼痛を訴えたことは前記認定のとおりである。しかし、他方前記認定事実と弁論の全趣旨によれば、初診時における触診、視診の結果、頭部外傷が認められなかつたことおよび正午前頃の受傷時から重篤に陥つた午後四時頃までの間、猛三の意識がかなり保持されていたことが認められる。また猛三が受傷後嘔吐したことを認めるべき証拠はない。これらの事実を綜合すると、頭痛を訴えた事実にも拘らず脳外傷に基づく死亡とは断言できない。

(二)  (血液異常による死亡の可能性について)

<証拠>と前掲鑑定結果によれば、昭和五〇年一〇月七日当時猛三は赤血球数及び白血球数が著しく少なく、血小板がやや少なかつたことが認められる。しかし、猛三の左下腿部の出血が容易に止まつている事実を考慮すると、右傾向と死亡との間に、因果関係が存在するとは認められない。

(三)  (糖尿病による死亡の可能性について)

猛三が糖尿病に罹患していたことは<証拠>によつて認められる。右鑑定結果によれば糖尿病患者は脱水症状をもたらすので健康人に比べてショック状態に陥り易いこと、比較的少量の出血の場合でも重症のショック状態に陥ることを認めることができる。しかし右各証拠によれば猛三の糖尿病は比較的軽度で、受傷当時は血糖を比較的よく調節された状態であり、これによつてショックの回復が遅れ乃至は出血が止らなかつたとは云い難いことが認められる。このようにして糖尿病と死亡との間に因果関係を認めることができない。

(四) 右(一)乃至(三)の事実並びに前記認定三1(一)乃至(三)の事実を綜合すると猛三は脾臓損傷に起因した出血性ショックに基づいて死亡したと認めることができ<る。>

四被告の不法行為責任

(一)  <証拠>を綜合すれば以下(1)乃至(5)の事実を認めることができる。

(1)  被告は前記認定事実から明かなとおり、初診時の診察および血圧測定結果等に基づき一過性の脳虚血症(神経原性ショック)と診断したが、猛三に入院を勧告して拒絶されたのちは、ショック症状への対応としては原告禎子から猛三が糖尿病に罹患していることを聴取した以外は、猛三が左肩疼痛を訴えたのに伴ないエックス線撮影を実施するまで診察、治療をしなかつた。

この点に関し、証人吉村の証言や被告本人尋問の結果中には、被告が数回猛三の様子を窺い入院を説得し、また吉村看護婦が数回血圧を測定したとの部分がある。他方右証言中には、吉村は猛三の血圧を測定しなかつたとの部分もあり、原告禎子本人尋問の結果に照らしても、被告主張の事実に副う右証拠はにわかに措信できない。

なお、被告は初診時に頭部を超音波エコー装置によつて検査をした旨主張する。被告本人尋問の結果によつて被告所有のソノスコープ(超音波エコー)の写真であると認められる検乙第二号証の一乃至四によつて、受傷当時被告が右ソノスコープを所有していたことが認めることができ、証人吉村の証言、右本人尋問の結果中には右主張に副う供述が存在する。しかし成立に争いのない甲第八号証、証人長谷川美代子の証言によると、医療費請求書には右検査を実施したとの記載がなく、また右吉村の証言は、この検査は被告が左下腿部の縫合を終えた後に行われたとするのに対して、右本人尋問の結果はこれを右縫合の前に実施したとして右証言と矛盾し、いずれもにわかに措信しがたい。他に右事実を認めるに足りる証拠がない。

(2)  猛三が午後二時二〇分入院した後、被告は婦長に指示して点滴静注によりショック状態からの回復、血管の確保の措置を講じたが、その際自ら猛三の症状の経過観察はしなかつた。この点について、被告本人尋問の結果中には入院と同時又は直後に被告が猛三を診察したとの供述が存在する。他方証人長谷川美代子の証言中には右事情を窺わせる部分がなく、また前掲乙第一号証中の病床日誌一枚目の記載内容が初診時に判明している事項であつて他に新しい事実の記載がないことからみても、右被告本人尋問の結果は信用できない。もつとも乙第一号証に記載されている血圧数値が初診時のそれと異なつているが、猛三の左肩胛部レントゲン撮影をした際に測定した数値を記載したものと考えられ、右認定を左右するものではない。

(3)  午後二時五〇分、被告は回診時に猛三を診察した。その結果によると腹部に緊張と圧痛の所見があつたが、被告は転落による興奮から来る腹部緊張と判断してそのまま退室した。

(4)  午後三時〇五分、猛三が突然腰部疼痛を訴えて暴れ出したので、被告は前記認定のとおり診療行為をした。被告はこの頃、猛三のショックが当初の見立てにかかる一過性の脳虚血症ではなく、腹腔内出血に起因するものではないかとの疑いを持つたが、血圧を測定したに止まつた。被告がその際腹腔内出血の鑑別のための検査、診察をしたことを認めるに足る証拠はない。

(5)  午後三時二〇分、猛三が全身各所の疼痛を訴えて興奮状態に陥つた。その際についても被告が腹腔内出血の有無を確認するための検査、診察をしたことを認めるに足る証拠はない。

(二) 右認定(1)の事実からすると、被告が猛三の顔面蒼白、冷汗多量の症状、血圧測定の結果、触診所見、転落による興奮に起因して腹部緊張の状態が生じる場合のあることを併せて、一過性の脳虚血症と診断したことに過失があるとはいえず、エックス線撮影までの間特段の診療をしなかつたことにも過失を見出せない。

また証人安富正幸の証言によれば、患者が腹部を打つて痛みを感じている場合、腹壁の緊張がたやすくとれないことは珍しくないと認められるところ、右認定(2)及び(3)の事実からすると、(3)の回診時に腹部緊張及び圧痛の所見が認められたが、これだけで腹腔内出血の存在を推認するのは困難であり、他に右出血を懸念すべき明らかな徴候のあつたことは認められないので、(2)(3)の被告の行動に過失があると断定することはできない。

しかし右証言によれば、出血以外の原因による一過性のショックが二時間以上回復しないことは割合少いと認められるところ、右認定(4)の事実によると、(4)の時点では猛三が腰部疼痛を訴えはじめており、受傷後三時間余も経過しかつ点滴を四五分間実施してもショック状態から回復しておらず、腹部に緊張があり、被告自身もこの頃から腹腔内出血の疑いを持つたのであるから、被告としてはこの段階で直ちに腹腔内出血の有無の鑑別措置を講ずべきであつたと考えられる。

<証拠>、証人安富の証言、前掲鑑定結果によると、患者がショック状態を呈した場合、ショックの原因を鑑別するため問診、視診、触診、血圧測定、血液検査、尿検査、脈搏の数及び強弱の検査、体温測定、エックス線撮影、心電図の撮影、腹腔穿刺などの方法によつて腹腔内出血の有無を確認し、次に出血による循環血液量の喪失に対して血液、代用血漿によりこれを補充し、心搏出量を増加させるのが最も有効な治療措置であり、そして出血場所を発見して止血措置を講じることが必要であることが認められる。この意味で医師にとつてはショックの原因解明のための鑑別が重大であるといわなければならない。

以上の諸点からすると、被告は猛三が腰部疼痛を訴えて興奮状態に陥つたことを知り、被告自身も腹腔内出血を疑つた午後三時五分すぎの段階で腹腔内出血の有無を確認すべき義務があつたのに、これをしなかつた点において過失責任を免れえない。

(三)  なお被告は、猛三が虚血症状にあつてショック状態に陥つていたから検査が実施不可能であつた旨を主張する。<証拠>によると、出血性ショックは急激に症状の悪化を伴うので、これに対処するには患者の状態を仔細に検討観察して、迅速に治療に取り組まなければならないことが認められる。しかも前記諸検査(腹腔穿刺は除く)が患者に多大の負担を負わせるものとは考えられない。

また被告は、猛三が興奮状態にあつたので、エックス線撮影や腹腔穿刺による検査を実施できる状況ではなかつたし、腹腔穿刺は腹管破裂、腹内液漏出を招来して非常に危険であるため、右検査を実施できなかつた旨主張する。証人安富の証言中には被告主張に副う供述部分が存在する。しかし、腹膣穿刺が医学上許されないというものではなく、<証拠>、前掲鑑定結果によっても腹腔穿刺が出血性ショックの有力な鑑別方法であることが認められる。しかも<証拠>によると、猛三は午後三時〇五分に興奮して暴れたが、その後三時二〇分再度興奮状態に陥るまで一時症状が安定したことが認められ、右事情を併せ考えると、この安定の間に右検査を実施するのが不可能であり乃至はこれを要求することが医師に難きを強いる結果となるとは解されない。

五前掲鑑定結果によると、本件のように脾臓から出血が発生している場合に、喪失血液の補給とともに止血措置を実施することが必須であることが認められる。

前記認定事実によると、猛三が腰部疼痛を訴えだした午後三時〇五分から容態が急変する午後四時〇五分までの間に、血液又は代用血漿を大量に補給して状態を安定させ、その後に止血措置を講じることが不可能であつたとは認められない。

被告は輸血用血液確保のためには長時間を要するため猛三が死亡するまでに輸血するのが不可能であつた旨主張する。しかし甲第一八号証によれば輸血は全血だけではなく、代用血漿も利用可能であることが認められるほか、輸血用血液を確保するのに被告主張の血液センターに発注する以外に方法がないとはいえず、附近の病院から血液の転送を受けることや付き添つている家族から血液の提供を受けることも可能であつたと考えられる。またこれらの方法により一度に必要量が得られなくとも、差当りの入手量を投入することにより症状の重篤化を防ぎつつ必要量を入手するまでの時間を稼ぐことも可能であつたと考えられる。

六損害

1  猛三の損害

(一)  逸失利益

金三七四三万五七二四円

(二)  慰藉料

証人萱原賀根雄、同萱原好美の各証言、原告禎子本人尋問の結果によれば、猛三が特段の重病をもたない壮年男子で、原告らと家庭生活を送り、子供の生育を楽しみにしていたことが認められる。その他本件口頭弁論に顕われた一切の事情、とりわけ被告の過失の態様、診療経過、猛三の受診態度を斟酌し、猛三の受けた精神的苦痛に対する慰藉料として金三〇〇万円を相当と認める。<以下、省略>

(横畠典夫 廣田民生 小坂敏幸)

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